『夢と夢をつなぐこと・・・』
それが私達のモットーです。
トータルプラン長山の仲介
・・・別ページの“地盤に関すること”について、より深く掘り下げる前に・・・実際に建物に加わる“力(荷重)”にはどんなものがあるのか?・・・また、地震(波)動などの“力”が建物直下の「地盤」にどのように伝わって・・・直上建物に対し、どのように“2次的影響”を及ぼすのか? を、ある程度理解されておくと・・・ある意味“命を預けることとなる建築物”の新築や改築時などに多少なりとも役立つのではと考えまして・・・甚だ簡単とはなりますが、記述したいと思います。
【1】 建築物などの土地定着物に加わる力
建築物などの土地定着物は、基本的にコンクリート基礎部など敷設し、地(表)面に建っている訳ですが・・・地震の際に限らず通常の状態においても様々な“力”が加わっています。・・・一般に・・・その“力”を、建物直下の地盤が支えることによって、直上建物を無事(健全な状態)に保つことができる事となります。
現在、建物に加わる“力(荷重)”として建築分野の構造計算上用いられているものとしては、以下の①~⑦の7種類があります。
(昭和56年(1981年)の建築基準法改正によって耐震基準が大幅に強化されました)
・・・ちなみに、先の東日本大震災後の解析よって広く知られるようになった・・・震源遠隔地の高層ビルなどに視られた「長周期地震動」への対策・取組みとしては・・・制震ダンパーの応用など「制震技術」によって、実際に対応されてきております。
※しかし、このページでは・・・内容を簡潔にするため・・・高層ビル特有の課題などを例外として“一般の建物に共通する全般的な話”として進めてしまいます。
構造計算上“力(荷重)”として想定しているものは・・・長期間に亘り継続する性質のものと、地震や台風など短期間あるいは短時間で落着いてしまうものがあります。また、以下の「固定荷重」、「積載荷重」、「積雪荷重」、「特殊荷重」などのように、地球の重力方向のみに加わると考えられるものと・・・「地震荷重(地震力)」、「風荷重(風圧力)」、「土圧や水圧」など、あらゆる方向に作用するものがあります。
・・・仮に・・・稀に起こる大地震などに対して、完璧に耐え得る建築物にしようとすると・・・残念ながら・・・かなり高額で不経済なものになってしまうと云わざるを得ません。
・・・もともと地震や台風・洪水など自然災害の“メッカ”とも云えるような日本においては、先人たちも・・・ある意味悟っていて・・・壊れたら直す、潰れたら建て直す、流されたら高い場所に移転する、延焼しにくい部材や町造りにする・・・重要な施設は、壊れにくいように、燃えにくいように、修復しやすいよう計画し造る・・・などといった・・・伝統・歴史・そもそもの考え方でありましたので・・・。
しかし・・・こんにちの日本では・・・実際の建築予定地域において、それぞれ適切と考えられる“荷重による力”を予め算定(想定)し、耐震性などを向上させて・・・云わば“安心できる建物”を設計施工することとなるのです。
① 固定荷重
「固定荷重」とは・・・その構造物自体の重さと,仕上げ材や固定される設備機器などの重さを“合計した重さ=建物の自重”のことです。そして、重力の(鉛直)方向に働く荷重と考えます。
・・・例えば・・・「同じプランならば、鉄筋コンクリート造の建物より木造のほうが、
建物自重は軽い。」と云うような表現に使います。
建物の自重は、予定敷地の「地耐力」との関連で注視されることが多く・・・特に、あまり地耐力がないと判断される敷地において、直接基礎(鉄筋コンクリート造のべた基礎やフーチング基礎など)の建築物を計画する場合などには・・・建物自重を軽くするため、その構造種別や仕上げ材などを変更することなどによって、設計段階において“調整する”ことがあります。
この「固定荷重」は、建築物を構成する材料の単位重量(体積あたりの重量など)と体積(面積×長さや高さ)から実状に応じて計算することとなっており・・・
・・・式にすると・・・
部材の重量(kN・キロニュートン) = 部材の体積(㎥・立法メートル) × 単位体積重量(kN/㎥・キロニュートン/立法メートル)
ちなみに参考として・・・代表的な建築材料(構造材)の単位重量を、軽いものから表示すると・・・
[木材] 杉(スギ)・檜(ヒノキ)・・・ 4(kN/㎥)
モルタル・軽量コンクリート・・・・ 20(kN/㎥)
コンクリート・・・・・・・・・・・・・・・・ 23(kN/㎥)
鉄筋コンクリート・・・・・・・・・・・・ 24(kN/㎥)
鉄骨鉄筋コンクリート・・・・・・・・ 25(kN/㎥)
鋼材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79(kN/㎥)
② 積載荷重
「積載荷重」とは・・・上記①の固定荷重に含まれない建物内の人間や家具・調度・物品など移動できるものを、“その建物が積載することになる荷重”のことです。
・・・建築基準法では、この積載荷重についての調査・研究データを統計的に調べ、その建物の用途や機能(利用形態)によって、それぞれを以下のように定めています。
・・・ここでは、主なものだけ表記します。
積載荷重(N/㎡) |
構造計算の対象
| 床の構造計算用
| 大梁・柱、または基礎の構造計算用
| 地震力計算用
|
住宅の居室
住宅以外の建築物における寝室
または病室
| 1,800 |
1,300
| 600
|
事務室
| 2,900 |
1,800
| 800
|
教室
| 2,300 |
2,100
| 1,100
|
百貨店や店舗の売り場
| 2,900 |
2,400
| 1,300
|
階上駐車場など
| 5,400 |
3,900
| 2,000
|
このように、床、大梁・柱・基礎、地震力・・・それぞれに対応する、構造計算用の“個別数値”があります。
また、床の構造計算時には、その上限に相当する値を、大梁・柱、または基礎の構造計算時には、それぞれの階での平均値を、地震力計算時には、建物全体での平均的な値を用います。
・・・このように・・・積載荷重を計算する上においては・・・滅多に来ない地震と・・・同時に・・・積載荷重が最大であることは・・・無いだろうと、別けて想定しています。
・・・一見して同じ様な建物でも、一般の住宅よりも人が集まる店舗や、物品を保管する倉庫などは・・・より大きな「積載荷重」に耐えられるように設計されているのです。
尚、一戸建住宅ではほとんど当てはまりませんが・・・それなりの規模の建築物(ビルや社宅用マンションなど)で用途変更を伴う場合において・・・構造計算上の積載荷重がギリギリと云った際などは・・・“その建物が積載することになる荷重”そのものを、柱や梁のそばにできる限り置くなど、荷重が分散するような配置にすることなども必要となってきます。
③ 積雪荷重
「積雪荷重」とは・・・建築物の屋根などに降り積もった“雪の重量によって生じる荷重”のことです。
垂直積雪量は、特定行政庁ごと過去の積雪記録によって決められています。北海道や新潟会津地方などの多雪地帯では、3mを超える場所もあります。
積雪の単位重量は、2,000(N/㎥)。・・・水の単位重量は、10,000(N/㎥)=10(kN/㎥)なので、比重を 0.2 と考えています。
・・・式にすると・・・
積雪荷重(N/㎡・ニュートン/平方メートル) = 垂直積雪量(m・メートル) × 積雪の単位重量(N/㎥・ニュートン/立法メートル)
・・・但し、春が到来し一度融け始めた雪が・・・完全に融けきらず・・・再度凍ってしまうと・・・重たい氷雪となって・・・上記の垂直積雪量が同じでも、その荷重が大きくなってしまうことがありますので注意を要します。
尚、積雪荷重の算定では、地域の状況に応じて軽減させる措置もありますが・・・例えば・・・雪止め金具等の障害物が無い、60°を超える急勾配屋根とする場合は、屋根上に雪が滞留しないものとして、垂直積雪量を0(ゼロ)として計算することができます。
④ 地震荷重(地震力)
「地震荷重」とは・・・地震により構造物が揺れる際に生じる慣性力を外力として扱うもので、「地震力」とも云います。そして、実際には地震時に構造物の水平方向に作用する力と考えます。
長期に亘って荷重がかかる上記①「固定荷重」、上記②「積載荷重」、上記③「積雪荷重」、下記⑦「特殊荷重」を、「鉛直荷重」と云い、これらの荷重が地震動により横方向の力として作用したものを「地震力」と考えることもできます。
・・・したがって「軽い建物ほど地震の影響を受けにくい」と云うことができます。しかし、建物自体がいくら軽くても、上層階に重量物を置いてしまうなど建物全体から視て重量バランスを崩してしまったり、全体の積載荷重を大きくしてしまうと・・・返って「地震の影響を受けやすい」とも云えるのです。
また、建物が受ける地震力は、その建物の固有周期とその建物を支持する地盤の種類によって変化します。
一般に、この固有周期が2~3秒の建物には、地震の揺れが伝わりにくく、そこではあまり大きな地震力が発生しないこととなりますが・・・一方で軟らかい地盤ほど、より長い周期で揺れるために地震力の減り方は少なくなります。・・・これを表すのが「振動特性係数」というものです。
・・・実際に、地震によって建物が破壊される時には・・・この、地域ごとに到達する“地震波の周期”が関係していることが解っています。
・・・これは・・・実際に我々が『・・・揺れている。』と感じる地域や建築敷地から、震源域までの距離や震源の深さ、さらには、そこから震源までの角度や、そこまでの地層的・地質的な状況(一般に・・・固い地層の場合には、地震(波)動が早く伝わりやすいが、その力が通り抜けるまでの時間は短い・・・逆に、軟らかい地層の場合には、初期の地震(波)動は一旦吸収されやすく、そのまま減衰していくこともあるが、吸収しきれないような大きさの地震(波)動だった場合は、その許容限界点を超えると増幅されて伝わりやすいこと・・・あるいは、地質の異なる地層を複数に跨って伝わったり、震源からそこまでの途中に断層が有るか無いか)・・・など様々な要素が複合的に絡み合っていると考えられるのです。
尚、建築基準法上や構造計算上では、具体的に・・・「地震力」を、各階層のせん断力(地震層せん断力:地震によって建物のある部分・境界面において逆方向の力がかかるもの)として考えます。
・・・この「地震層せん断力」や上記の「振動特性係数」を、式によって表記することはできますが・・・かなり専門的・複雑となりますので、ここでは省きたいと思います・・・が、構造計算上で「標準せん断力係数」と云うものを想定しておりますので、少し簡単にご説明したいと思います。
「標準せん断力係数」とは・・・地震時に建物の1階に生じる加速度の、重力加速度に対する比の事でありまして・・・
・・・1次設計
(数十年に一回程度起きる中地震)では、その数値を0.2以上
・・・2次設計
(数百年に一回程度起きる大地震)では、その数値を1.0以上 ・・・として構造計算に盛り込まれています。
⑤ 風荷重(風圧力)
「風荷重」とは・・・風によって“構造物外周の各面に働く荷重”のことです。低層階よりも高層階で“強い力”が加わる性質があります。
風のような流体の圧力は、「流体の密度 × 速度の2乗 に比例する」と考えます。また、基準とする数値は、地域ごとの過去の最大風速や被害状況、建物の断面や平面形状によって導き出される数値となります。
・・・3つの式で表すと・・・
風荷重(N・ニュートン) = 受風面積(㎡・平方メートル) × 風圧力(N/㎡・ニュートン/平方メートル)
風圧力(N/㎡・ニュートン/平方メートル) = 風圧係数 × 速度圧(N/㎡・ニュートン/平方メートル)
※風圧係数は、建物の断面や平面形状によって決まる係数で、風上は正、風下は負となります。
速度圧(N/㎡・ニュートン/平方メートル) = 0.6 × (建物の高さ方向の分布係数:地域ごとの地表面の粗度を考慮して決めるもの) × (基準風速の2乗)
※基準風速は、地域ごとの過去の最大風速や被害状況を考慮して決めるもの。毎秒30~46mの範囲内で決めている。
・・・屋根材などが軽い素材などで、その取付けが甘かった(不充分であった)りすると、吹き上げられてしまうことがあります。
・・・ちなみに・・・平成26年6月時点の・・・茨城県牛久市・つくば市・龍ケ崎市の「基準風速」は、毎秒34mとなっています。
また・・・最近の・・・大型台風や平野部での竜巻・ダウンバースト現象など“突風による被害”が・・・もしも顕在・常態化してきたりすると・・・「基準風速」など、その都度見直される可能性はあります。
⑥ 土圧・水圧
「土圧・水圧」とは・・・周囲の土や地下水により“構造物地下部分の壁や擁壁などに働く荷重”のことです。地下壁などに作用する「土圧」は、地表面(設計的に云うと、GL:地盤面)からの深さが深いほど大きくなり・・・「水圧」も、水位面(WL)からの深さが深いほど大きくなりますが、実際の地下水位の深さによって、その圧力が変わってきます。
地下壁などは、常に土圧・水圧に耐えるようにするため、地上階の壁厚よりも当然厚くなります。この地下壁の厚さは、最低18㎝以上と決められており、実際の地下階高、水位レベル等により地下の壁厚は変わります。地盤調査資料に基づいて、土圧・水圧を計算する必要があるのです。
・・・平成12年の建築基準法改正によって、地下の居室を設けることが緩和されたことにより、「土圧・水圧」を受ける建物が増えてくるとは思いますが・・・河川に近い軟弱地盤地や海に近い埋立造成地では、特に注意を要します。
また・・・建物基礎部と堅結することとなる地下打込支持杭(しじぐい)など・・・軟弱地盤地において視られる・・・「地盤の流動化・液状化現象」に、この「土圧・水圧」が密接に関係しています。
⑦ 特殊荷重
「特殊荷重」としては・・・工場等の走行クレーンや、屋上観覧車などの“移動荷重”、大型工作機械などの作業中に起こる“衝撃荷重”などが挙げられます。
・・・このように、個々の建物によって実際の使用方法が異なりますので、局所的に重量物を設置したり・・・どんな建物でも、特別な荷重が想定される際には、予め「積載荷重」として考慮しておく必要があります。
【2】 “それぞれの力”の流れ
上記の「固定荷重、積載荷重、積雪荷重、特殊荷重」などの「長期荷重」は、鉛直(垂直)方向に“その力”が働く訳ですが・・・
・・・建物内部においての“力”の流れは・・・2階建の場合・・・
屋上や屋根部から梁や柱、壁などを介して ⇒ 2階床から梁や柱、壁などを介して ⇒ 1階床から梁などを介して ⇒ 基礎部 ⇒ (支持杭など) ⇒ 地盤 へと伝わります。
・・・そして・・・その長期荷重が加わっている状態に・・・「地震荷重(地震力)、風荷重(風圧力)、土圧や水圧」などの、横(水平)方向の“力”が働く(加わる)ことによって・・・地盤に伝わる“力”が、さらに大きくなってしまう(増幅される)ことがあります。
・・・云わば、この“厄介な力”を処理する方法として、耐震構造や制振構造、免震構造などの・・・
別ページで取り上げた“建物の地震に対する備え~”があります。
【3】 構造設計時における建物性能の基本的な想定事項・確認事項とは?
建築物などの土地定着物には・・・前述のように、荷重が単独で作用するのではなく、様々な条件に応じて複数の荷重が作用しています。
そのため構造設計上、以下のような荷重の状態を想定し・・・それぞれの“荷重(力)”に対応する・・・云わば、建物が“土地定着構造物”として確保するべき性能を定めて設計を行うのです。
① 常時作用する荷重に対して
建物に対し日常的かつ長期間に亘って作用する荷重としては、固定荷重と積載荷重(多雪地帯では積雪荷重も)などがある。これらの総和(合計)を「長期荷重(常時荷重)」と云う。
《建物使用性能の確保と機能保持》 常時作用する荷重=長期荷重に対しては・・・安全であることはもちろん、構造部材の変形やたわみ、ひび割れなどによって、建物を使用することに障害が起こらないように設計を行う。
② 稀に発生する荷重に対して
建物使用期間中、数十年に1回程度発生と予想される荷重には、中地震や台風、大雪などがあり、長期荷重と地震荷重(地震力)、風荷重(風圧力)などの総和(合計)を「短期荷重」と云う。
《大きな損傷の防止》 短期荷重に対しては・・・荷重そのものが、短期間あるいは短時間で無くなるため、建物にある程度の変形やたわみなどが生じることはやむを得ないが、構造部材などに大きな損傷が生じないように設計を行う。
・・・ちなみに「中地震」を明確に表現しようとすると・・・現実には加速度等が関わるので、かなり難しくなってしまうのですが・・・あえてイメージし易いように、また誤解を恐れず表記すると・・・“震度5強程度ぐらい”でしょうか。
③ 極めて稀に発生する荷重に対して
建物使用期間中に発生する可能性は高くはないが、無視できない荷重として、数百年に1回程度の大地震がある。
《人命の安全性確保》 この大地震に対しては・・・最低限建物の倒壊・崩壊を防止して、人命の安全性を確保する(避難等に要する時間を確保する)ことを目標に設計を行う。
・・・ちなみに・・・これもまた「大地震」を明確に表現しようとすると・・・現実には加速度等が関わるので、かなり難しくなってしまうのですが・・・あえてイメージし易いように、また誤解を恐れず表記すると・・・“震度7程度ぐらい”でしょうか。
尚、建築基準法施工令第82条第2号より、構造設計で考慮する荷重の一般的な組み合わせを以下に示します。
(原文のままです・・・G:固定荷重、P:積載荷重、S:短期積雪荷重、W:短期風圧力、K:地震力・・・Kには、1次設計用と2次設計用あり)