街並と天空   

『夢と夢をつなぐこと・・・』

それが私達のモットーです。
トータルプラン長山の仲介


「地盤」を具体的に把握するために。

地盤調査イメージ


!マーク


   地震や集中豪雨など自然災害による被害が生じるたびに、その地域の地盤状況がどのように建物などの土地上定着物に対して悪影響を及ぼしたか論じられます。
   建物など一般の土地上定着物にかかる全ての“荷重=力”は、最終的に基礎や支持杭から地盤に伝わることとなりますので、この点において「地盤」と「建物」は最も重要な関係と云えます。
   特に自然災害の多い日本においては、地盤の状況が建物の構造計画や形態、建築コストにまで大きく影響することを考えると、事前にできる限り土地の履歴(地歴)を調べたり、周辺の工事現場などから情報を得たりすることも重要となってまいります。

   【Ⅰ】 地盤調査

    「地盤調査」の最終目的は、その地盤の「支持力」と「沈下量」を数値的に捉えることにあります。

    最近では、2階建程度の比較的「荷重」が軽い建物でも、「地盤調査」を希望する施主様も増えてきている傾向です。
・・・マスコミなどで“欠陥住宅”の原因が、『・・・地盤調査そのものの未実施や、適切でなかった設計施工などの複合的な要因もさることながら、第一に「軟弱地盤」を認知できなかったことにある。』と多く取り上げられ報道されることも影響しているようです。また、ほかにも宅地造成後、充分にその地盤が締め固まらないうちに建物の基礎工事に着手していたことなども要因の一つと考えられます。

    ・・・以前の木造2階建は、その基礎部を「布(フーチング)基礎」するのが一般的だったのですが・・・昨今は、建物の「不同(等)沈下」対策などの理由で・・・より重量のある=荷重がかかる「べた基礎」を採用するケースが一般的になってきております。
    ・・・しかし、そもそもの話として・・・いくら「基礎」をしっかりと強固に施工しても、それを支える肝心な「地盤」が想定外に軟弱であったり・・・悪い状況であった場合には、“ほとんど意味の無い事”となってしまうのです。・・・裏を返せば、その「支持地盤」が・・・比較的に良好な状況であると判断できる敷地における・・・木造平屋建~2階建の場合には、「布(フーチング)基礎」であっても、充分にその能力を発揮できる環境にあると云えます。それに、実際のコンクリート打設量が「べた基礎」の場合と比べ、少なくなりますので“より安価”となる筈ですし。・・・本来、このような・・・「地盤」を判断する設計資料として「地盤調査」が必要なのです。

    ・・・一般の住宅など、これから建築しようとする多くの方にとっては・・・“現実の予算”と云うものがあるため、地中内の“目に見えない部分”に対して、その資金を投入すること自体に抵抗を感じてしまうのはもっともなことです。・・・しかし「適切な地盤対策」を採らないで、そのまま施工してしまうと・・・下のイメージ図のような「不同(等)沈下」や、地震時などの「被害」を、容易に想像できてしまうのです。このような「被害」を回避するため、建築設計着手前に現地での「地盤調査」をまず行って、状況に適した構造や施工方法を考慮した設計とすることが何よりも重要となるのです。


不同沈下イメージ


地盤タイプイメージ


   
    「地盤調査」には、「土質(ボーリング)調査」と「地耐力調査」があります。・・・また、別ページ「近頃特に・・・「地盤!地盤?」と聞くけれど!?」や、「建物に加わるそれぞれの“力”を理解する~建築学基礎講座」でも触れましたが・・・「地下水位」を具体的に把握することが、実際の施工計画をしたり、建築工事見積書を作成する上で大変重要となります。

    「土質(ボーリング)調査」は、実際に地表面から孔(あな)を堀って・・・土の採取と地層構成の調査などを行うものです。・・・この土質調査とともに「標準貫入(かんにゅう)試験」などの「地耐力調査」を行うことが一般的です。
    「標準貫入試験」とは・・・簡単に云うと・・・その地中内の「土の硬さや軟らかさ」や「締まり具合」を知るために・・・“ある一定の荷重”を、地表面から地中内のある程度のところまで掛け続け・・・“その反発力”を表す「N(エヌ)値」と、土質区分(粘土、シルト、砂、礫(れき)など・・・実際にはもっと専門的に細分化しますが)、地層構成を調べる試験です。


   ① 土質(ボーリング)調査
    土質(ボーリング)調査の方法は・・・地盤を掘削しながら、地層が変わるたびに土のサンプルを実際に採取していきます。・・・この採取された「土の質」によって、予定建築物の具体的な支持方法などが変わってまいります。
    ・・・“地盤の良し悪し”は、その地層によっても、ある程度の判断がつくもので・・・一般的に云って、「沖積層」より「洪積層」のほうが、地盤そのものが古くに創られており、良く締め固められているため「耐力」が大きいです。
    ・・・また「砂質」と「粘土質」の場合では、そもそも建物などの荷重に対する「沈下」のメカニズムや考え方が異なっているため、地下室を造る際などの掘削工事(山止め工法など)に影響することがあります。


   ② 地耐力調査
    「地耐力調査」とは、予定建築物の敷地地盤がどれだけの総荷重に耐えられるかという、また建物の支持工法を決定づける重要なものです。

    ・・・例えば・・・沼地などで、カメような小さな生物は足をとられることなく動き回れるのに、人間がそこに立つと足が沈んで動くことが困難になる・・・というような場面を想像して頂くと・・・
    「その場所は、カメを支える地耐力を持つが、人間を支える地耐力を持たない。」と云うことができます。

    建物などの土地定着構造物も、この原理と全く同じで・・・地耐力に対して建物にかかる総荷重が大きいと、結果として建物は傾いたり、沈下してしまいます。

    「地耐力」を測定する方法としては・・・一般的に、上記① 土質(ボーリング)調査の際に行う「標準貫入試験」や、「平板載荷試験」、「電気抵抗地下探査」、「弾性波地下探査」、比較的簡易な手法の「スウェーデン式サウンディング試験」などがあります。

    ・・・「標準貫入試験」を例に、「地耐力」について・・・先の記述よりも具体的にご説明すると・・・

     まず、地中に挿入する「試験用サンプラー」を用意して・・・土質区分が異なる層毎に、この「試験用サンプラー」に対して質量63.5㎏のハンマーを、高さ76㎝から自由落下させます。(ハンマーで打ち込みます)
     この「試験用サンプラー」を30㎝打ち込むために要した打撃回数を「N値」で表し、“地盤が持つ支持力=地耐力”を間接的に捉えます。ちなみに「N値」は、その最高を50としていますので、これに近ければ近い値ほど「地耐力があり,良い地盤である。」と云えます。
     ただし「N値」が同じであっても、土質の違いによって、「その地耐力」は異なります。一般的に「礫(れき)地盤」は、「砂質地盤」や「粘土質地盤」より、「その地耐力」が大きいです。
     また、「砂質地盤」と「粘土質地盤」を比較すると、「N値」が30までは・・・大雑把に云って・・・その「地耐力」が、どちらも最大200(kN/㎡)ぐらいで、若干の違いがあるものの、ほぼ同じぐらいと云えるのですが・・・「砂質地盤で土粒子が密に結合したもの」と「粘土質地盤で非常に硬く締め固まったもの」の「地耐力」を比べると・・・それぞれ、300(kN/㎡)200(kN/㎡)ぐらいとなり・・・

     「砂質地盤で土粒子が密に結合したものの地耐力」 > 「粘土質地盤で非常に硬く締め固まったものの地耐力」 という関係式が一部で成り立ちます。
     そして、一般的に「砂質地盤」のほうが「粘土質地盤」と比べて、「試験結果の偏差(偏り)が小さく、その信頼度が高い。」と云えるのです。



   【Ⅱ】 それぞれの地盤性質とその影響
   (1)土質の影響
    ① 砂質地盤と液状化現象

      平成7年(1995年)阪神・淡路大震災で、海岸付近の道路が波打っていたり、高速道路の橋げたが落下した光景を記憶されている方も多いと思います。また、平成23年(2011年)東日本大震災でも・・・道路内のマンホールがせり上がったり、電柱が何列も傾いたり・・・確か・・・8,000棟以上の建物で「不同(等)沈下」などを引き起こしたように記憶しております。
      これらは、「砂質地盤」の一つの特徴と云える「液状化現象」によるものです。
      「砂質地盤」は・・・通常の状態においては、その土粒子同士がほぼ一定の“内部摩擦角”によって互いに繋がっていますので、建物等の沈下量はむしろ少ないと云えるのですが・・・地震による振動などによって一旦、地盤内の土粒子同士の結合力が緩んでしまうと・・・土粒子と地中内の水分が分離し、地中内のいたるところで土粒子が集まって「内圧」が高まり・・・ある時点で、この「水分」が土粒子とともに地表面へ吐出します。・・・この現象を「液状化」と云い、この「水分」とともに上がってきた土粒子(砂)を、「噴砂(ふんさ)」と呼んでいます。


      ・・・海岸の砂浜で波打ち際に人が立っていると、次第に両足が砂の中にもぐっていくように・・・地盤が液状化すると、建物が「不同(等)沈下」を起こして傾いたり、最悪の場合には完全に地盤が建物を支持できなくなって倒壊してしまいます。・・・また、地中内の支持地盤に達していた支持杭(コンクリート杭や鋼管杭等)が施行されていても・・・地盤自体の沈下によって建物と、それ以前の地面に段差ができてしまったり・・・それまでの支持杭を抑えていた「土圧」が失われたり、液状化によって生じる地震力などの“水平力”が直接、支持杭に加わるため、地中内の支持杭そのものが耐えきれなくなって折れてしまうことなどもあります。

      シルトや粘土で構成される「軟弱な地層≒沖積層」が厚く分布している地域などでは・・・地下水位の低下とともに、宅地造成時の新たな盛土や建物などの新築によって新たな荷重(重量)が地盤に加わると・・・地中から水分が絞り出されて「圧蜜(あつみつ)沈下(下記②)」を引き起こします。
      ・・・昭和39年(1964年)新潟地震では、建物の沈下や傾きがあったものの・・・突然の強力な地震力によって「圧壊(潰れる)」するような建物自体の構造的な損害が、むしろ少なかったという事例もあります。・・・この他過去の地震においても、同様の事例もあり・・・これは逆説的ですが・・・「液状化現象」が建物などの「免震」の役目を果たしたとも云えるのです。


   ② 粘土質地盤と圧蜜沈下
    「粘土質地盤」は・・・粘土が水をはじくように「透水性」は少ない反面、長時間に亘って「圧蜜沈下」を進行させる性質があります。
    「圧蜜沈下」とは・・・水分を多く含んだ地盤の上に建物などを建築した際、その荷重で長時間をかけ地中内の水分が抜け、総体積が減少することによって生じる地盤沈下のことです。
・・・ちなみに「あつみつ」の「みつ」は、「度」の「密」ではなく、「蜂」の「蜜」です。

      ・・・もともと洪積層の粘土は、長期間に亘って圧蜜され形成されたものなので、新たな荷重が加わることによる「沈下量」は少ないと云えます。

      ・・・粘土質地盤などの上に、布(フーチング)基礎やべた基礎など「直接基礎」の建物を建築すると、次第に沈下していくことがあります。特に、建物自体の「固定荷重」や建物の「積載荷重」などに偏りがあると、「不同(等)沈下」を起こし建物が傾くことがあるので注意が必要です。・・・また、建物周辺を掘削し、その掘削した部分を残土などで埋め戻した箇所に駐車場を設けると・・・地盤沈下してアスファルト舗装面が波打ってしまうこともあります。
      粘土質地盤と判っている敷地や、沈下が予想される部分などについては、山砂など適切な材料で埋め戻し、しっかりと圧力をかけ締め固める(転圧する)ことが重要です。



   (2)土質や人為的な要因が関係する影響
    ① 不同(等)沈下

     地盤内の土質が建物などに与える影響として、上記(1)のような「液状化」や「圧蜜沈下」がありますが、これらを含め建築後に地盤が引き起こす問題として、「不同(等)沈下」があります。
     「不同(等)沈下」とは・・・何らかの原因・・・例えば、地盤の歪みなどによって、建物などが不均等に(不揃いに)沈下してしまうことです。

     ・・・「不同(等)沈下」を起こしている建物内では、床部分が平らでなくなったり、壁にヒビが入ったり、窓や引き戸などの開口部が開きにくくなったり・・・逆に、決まった方向ばかりに開いてしまうなどの状況となります。・・・長時間建物内にいる人も、三半規管に“くるい”が生じて、気分が悪くなったり・・・いろいろと症状が出てくると思います。

      ・・・ある程度の地盤調査や地盤改良を実施し、適切に設計施工など具体的に対応したつもりでも・・・思いがけない、想定外の要因で「不同(等)沈下」が起きることも・・・残念ながら、あると思います。
     ・・・「不同(等)沈下」を起こす原因として・・・先の「液状化現象」と「圧蜜沈下」以外に考えられるものとして・・・


     a.強度不足・・・何らかの要因により、支持地盤の強度が減少、または不足してしまった。・・・そもそもの地盤調査における調査ポイント不足や、敷地周辺の環境変化などによって地中内の環境(地下水位や水脈、土圧など)にも変化が生じてしまった。
     b.空隙・・・地中内に・・・古井戸の跡や防空壕、物資倉庫用の横穴などの遺構が隠れていたため、知り得なかった「空洞」があったり、何らかの要因によって、「空洞」ができてしまった。
     c.腐植土層・・・軟弱地盤であったため地盤改良を施したが・・・地中内に「腐植土層(植物の遺がいが堆積してできたもので非常に軟弱な土質の地層のこと。腐植土の特徴としては圧縮性が高く、水分を多く含み、腐植土層が厚い場合には沈下量も大きくなると考えられる)」などがあって、セメント系の固化材や接着剤などの改良体が、充分に効果を発揮できなかった(固まらなかった)。
     d.地中内障害物・・・盛土などの中に、比較的大きな自然石やコンクリート、木の類いがあって・・・偶然にも、そのポイントを調査してしまい、現実よりも良いデータ(調査結果)が得られたため・・・事実を誤認して「直接基礎」を施工してしまった。
     e.軟弱地層の傾斜・・・地中内の軟弱地層に傾斜部分があることを発見できずに・・・最適であると判断した地盤改良工事が、結果として不充分だった(改良体を充填する地中内の「照準」に“くるい”が生じてしまった)。

地盤改良イメージ


   【Ⅲ】 「軟弱地盤」への対処方法
   (1)「不同(等)沈下」を起こさせないために・・・

     予定建築物の敷地における適切な地盤調査を実施して、地盤状況を正確に把握していることが前提の話となりますが、「不同(等)沈下」を、できる限り回避する方法を・・・簡単に挙げると・・・以下(①~③)があります。

     ① やや軟弱な地盤であると判定された場合
     総荷重を軽くする
・・・「積載荷重」をできるだけ軽めに計画し、軽めの構造材や仕上げ材などによって建物の総重量「固定荷重」も、なるべく少なくする。
                  ・・・布(フーチング)基礎などのベース幅をできるだけ広げるなど、基礎部分が地面と接する面積を広くしてあげることで、建物から地盤に伝わる「荷重」が接地面全体に分散されるため、実質的に軽くなります。

     ② 軟弱な地盤であると判定された場合
     基礎部分の剛性を高くする
・・・上記①の方法に付け加えると良いのですが・・・基礎の一部に撓み(たわみ)の“力=荷重”が集中しないよう、基礎の構造をしっかりと丈夫にします。
                         ・・・「べた基礎」にすることも、それ自体の剛性を高める方法の一つですが、当然に基礎自体も重くなりますので・・・実際の地層構成や地質によって、「不同(等)沈下」をかえって招くことがあるため、慎重かつ適切な基礎構造の選定が必要です。

     ③ 極めて軟弱な地盤であると判定された場合
     地盤に杭を打ち込む
・・・上記①、②の方法に付け加えると良いのですが・・・建物の荷重を支持杭で支えて、支持地盤に伝える方法です。
      そもそもの地盤を改良してしまう・・・上記①、②の方法に付け加えると良いのですが・・・建物の荷重が伝わることとなる軟弱地盤そのものの強度を上げてしまう方法です。


    (2)「不同(等)沈下」が実際に起きてしまったら・・・
     ・・・何らかの原因によって・・・残念ながら・・・「不同(等)沈下」が起きてしまった場合、建物が傾いた状態にしておくことは・・・建物の構造や強度上はもちろん、実際にそこで生活する人の健康面や、精神衛生上も良くありません。
     そして・・・現実には、傾いた建物を取壊して地盤対策からやり直ししたり、相当に安価となっても売却してしまうことができる方は限られてくるため・・・何とか、傾いた建物を正常な状態に戻す必要が出てきます。
     ・・・しかしながら、建物の総重量は・・・おいそれ!と簡単に持ち上げられるようなものではなく・・・隣地とのスペースに、ある程度のゆとりが無い場合などは、特に作業自体に障害が出てきてしまいます。

     ・・・ここでは、具体的な改修方法として・・・以下に2つのポピュラーな工法を挙げますが・・・あくまでも、建物直下の地中内状況や土質、作業環境などの諸条件によって、現実にはケースバイケースとなるものと、ご承知おき下さい。

     ① 鋼管圧入工法
     この工法は・・・まず、傾いた建物の基礎部周辺、とりわけ鋼管打設によって建物荷重を、新たに支え直す箇所(ポイント)の土を掘り起こし、油圧ジャッキを使用して一時的に仮止めしておきます。その後、予め決めておいた箇所(基礎底部など)に鋼管を設置し、油圧ジャッキを緩め・・・建物自重を利用しながら・・・鋼管を建物を支えることができる硬い地盤まで打設していきます。
     軟らかい層では、建物自重によって鋼管が比較的スムーズに挿入されていきますが、硬い層に達すると次第に止まります。全ての鋼管打設が終了したら、また油圧ジャッキを用いて、建物の傾きを修正しながら固定していく工法です。

     ② 薬液注入工法
     この工法は・・・まず、建物直下の軟弱な層まで孔(あな)を開け、薬液注入管を到達させます。この管が、目標の“照準の深さ(レベル)”に達した後に、硬化時間の短いセメント系の固化材や接着剤などの薬液(改良体)を注入し、軟弱層の土粒子といっしょに固めることで強度を高め、建物の支持地盤とします。これは、同時に遮水性も高める工法です。